AIが数か月で有望な抗体医薬候補を創出、難攻不落の標的に挑む
米バイオ企業Nabla Bioが開発したAIが、難しい標的であるGPCRに対する有望な抗体医薬候補を数か月で生成したと報告された
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人工知能(AI)による創薬がまた一歩前進した。マサチューセッツ州のバイオテクノロジー企業Nabla Bioの研究チームは、従来の開発に数年を要する抗体医薬品を、わずか数か月で設計可能な新しいAI技術を開発したと発表した。
標的となるのは、細胞内外の化学メッセージを中継する「Gタンパク質共役受容体(GPCR)」と呼ばれる膜タンパク質。これは、米国食品医薬品局(FDA)承認薬の約3分の1が作用する主要ターゲットでありながら、その多くが細胞膜の内部に埋もれており、抗体医薬による標的化が極めて困難とされていた。
しかし今回、Nabla BioのAIは、数十種類のGPCRを標的とした抗体候補を設計。これらの候補は、既存の薬と同等、あるいはそれ以上の効果が期待される。中には、従来の「阻害」ではなく、細胞膜上のシグナル伝達を「活性化」できる、AI設計として初の機能を持つ抗体も含まれている。
この成果は、AIによる次世代創薬の可能性を示すと同時に、これまで困難とされていた標的へのアプローチを根本から変えるものであり、製薬業界から大きな注目を集めている。